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都立大学の家

店舗併用住宅

担当:青木弘司、矢舗礼子
所在地:東京都目黒区
構造・規模:木造2階建て
敷地面積:50.33㎡
建築面積:36.19㎡
延床面積:73.69㎡
設計期間:2021.11ー2022.6
施工期間:2022.7ー2023.2
構造設計:平岩構造計画
施工:ビーンズ
写真撮影:新建築社写真部


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外部環境を繋ぐ間戸としての住宅

都内に計画した店舗併用住宅である。敷地の西側には大正時代に創建された寺があり、その緑豊かな境内を背に短冊状に区画された下駄履き住宅が軒を連ね、かつての町屋の面影を残している。1階の店舗は、さまざまな見世構えによって街並みを形づくり、東側の前面道路の坂道は、いつも行き交う人で賑わっている。2階の住居は、街の喧騒から逃れるように、暗々のうちに存在していて、外部から隔絶されているようである。この対照的な階層の有りようを相対化するために、1階の店舗で快活に過ごすことと、2階の住居で穏やかに安らうことを等価に位置付けたいと考えた。両隣が迫り、背後の寺の境内とは擁壁で隔てられている中で、東西それぞれの質の異なる外部環境の気配を感じながら健やかに暮らす方法を模索した。
まず、10寸勾配の片流れ屋根の小屋組を室内に現して、2階の住居の上方に大きな吹抜けを確保した。この吹抜けは、増改築を繰り返したと思しき隣家の複雑な屋根形状を掻い潜るようにして高窓から外光を取り込み、小屋組を長手方向に反復させながら、室内を東西に貫通するように前面道路と背後の寺の境内を繋いでいる。外部の接点となる両妻面には、二等辺三角形の開口が自律的に設けられている。
小屋組の各部材の表面には外光が回り込み、その様子が日々刻々と変化することで、明るさや、ほの暗い抑揚を室内に生み出す。幾重にも重なる小屋組によって、外部空間の質が緻密に映し取られているという意味では、建物の長手一杯に引き延ばされた懐の深い間戸が住居の上部に横たわっているとも言えるだろう。住居は直截に外部に開かれるのではなく、この間戸を介して外部に明け渡されているのだ。
1階の店舗では、多数の人との接点をもつことで社会に触れることになるが、2階の住居も、これとは異なるかたちで、外部と積極的に関係を取りもつような開き方を提示したいと考えた。さまざな人と接し、外部の質に触れながら、この街と共に暮らし、愛着を育むような建築のあり方を導き出せたのではないかと考えている。